店長日記
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住宅用の木材とは
2025.07.01.
【住宅用木材とは何か】
〜「クレーム」の正体と、木に寄り添うということ〜
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木材って、ただの材料ですか?
住宅用の木材。
一言でそう言っても、その世界は実に奥深いものです。
「木なんてどれも同じでしょ?」
「まっすぐで、節がなくて、加工しやすいほうがいいに決まってる」
そう思っていませんか?
もしそうだとしたら、あなたの目に映っているのは“木”ではなく、“建材”なのかもしれません。
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産地・製材所・時期によってまるで別物に
木材の世界には「同じものはふたつとない」という絶対の真理があります。
たとえ同じ製材所の、同じサイズ、同じ樹種の材料でも——
育った場所が違えば木目も違う。
伐採された季節によって水分量も、収縮の傾向も、色合いも違ってきます。
それは工業製品ではない証。
木材は「自然」からいただいた命のかけらであり、それぞれに個性があります。
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曲がり・ヒネリ・節。それが“欠点”なのか?
「この柱、曲がってるんだけど」
「プレーナーがちゃんとかかってないよ」
「節がこんなに出てるのはおかしいでしょ?」
こうした声が、建築現場や顧客から届くことがあります。
いわゆる「クレーム」です。
でも、ちょっと待ってください。
その“違和感”は、本当に木の問題なのでしょうか?
それとも、木に対する理解が足りなかっただけなのでしょうか?
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クレームが生まれる本当の理由
木は自然の産物。
まっすぐで節がなく、何の狂いもない材料だけを求めるなら、
それはもはや「木」ではなく「新建材」と呼ばれるべきものです。
つまり、こういうことです:
木材を「新建材」と同じ土俵で扱うと、大きな勘違いが生まれる。
そして、その勘違いが「クレーム」という形で現れてくるのです。
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「安さ」を追い求めるほどに失われるもの
昨今、木材のクレームの背景には、予算不足・工期短縮・職人単価の下落という現実があります。
• 材料の単価はどんどん削られる
• 加工の工程も削られる
• 納期は短くなる
• 現場の大工さんも、適正な賃金が得られていない
そんな状況で「木が悪い」「仕入れが悪い」と言われても……
木にだって、木材業者にだって、何も言い返せません。
でも、本当に悪いのは「木」でしょうか?
それとも、「木ではないものを木に求めている」という矛盾のほうではないでしょうか?
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木にしか出せない、ぬくもりと品格
機械で作られた新建材は、確かに便利です。均一で加工もしやすい。
でも、時間が経つほどに魅力を増すのは、天然木材です。
• 柱一本にしても、年輪の深さが空間に奥行きを与える
• 天井板に節があるだけで、空間に“表情”が生まれる
• わずかに波打った木目が、手仕事の味わいと自然の力を伝えてくれる
それは、どれだけ加工精度を高めても出せるものではありません。
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私たちは、木と共に生きている
木材を扱う人間として、伝えたいことがあります。
木は「言い訳できない素材」です。
生きてきた環境がそのまま表れる。
手を抜いたらすぐにバレる。
誤魔化しがきかない。
だからこそ、誠実に向き合った人の仕事は、必ず木に現れます。
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木を選ぶ前に、心の準備を
木材を使って家を建てるということは、自然と一緒に生きる選択です。
それは、多少のクセも含めて「この木と一緒に暮らす」という覚悟でもあります。
まっすぐじゃないかもしれない。
節が気になるかもしれない。
でも、それを「味」として愛せるかどうか。
それが、木の家を選ぶということです。
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最後に:木は「商品」じゃない、「資源」です。
あえて言います。
新建材は“商品”ですが、木材は“資源”です。
「選ばれる木材」ではなく、「選び取る木材」へ。
私たちは、そんな時代をもう一度取り戻したい。
あなたが手に取るその一本の木が、どこから来て、どんな時間を過ごしてきたのか。
それに少しでも想像を巡らせることで、
クレームではなく、感謝が生まれるかもしれません。